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日々の実践と学びの備忘録

形式的な手順を重要視し過ぎない

組織間やメンバー間の仕事の伝達は、小さな組織では口頭など直接的なコミュニケーションで調整しやすいのですが、大きな組織になると次第に難しくなっていきます。

そこで、大きな組織でも効率よく仕事をするために、仕事を各担当者レベルで仕組み化するなど、各組織ごとに工夫されています。

仕組み化することは大事ですが、それを重要視し過ぎるとかえって非効率になってしまう場合があります。

しかも、それに気づかないでいると生産性の低下、その結果売上や利益の低下に直結します。

 

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「形式的な手順」を守ること

「官僚制」とは?

組織が大きくなるにしたがって担当者の仕事が細分化・専門分化してくることを、ドイツの社会学者のマックス・ウェーバーは「官僚制(ビューロクラシー)」と呼びました。

組織が大きくなると、組織のメンバーが全ての仕事を把握するのは難しくなります。

全ての仕事を中途半端に知っているメンバーよりも、一つの仕事のスペシャリストをメンバーとして集めたほうが成果が高くなります。

そして、その仕事の伝達には、「形式的な手順」による一定のルールで行うという仕組みが整備されていきます。

このような「官僚制」の特徴を持った組織は、合理的、効率的に動くことができる「最高に優れた組織形態」と考えたそうです。

「官僚制の逆機能」

しかし、「官僚制」と聞くと役所での「お役所仕事」を連想してしまいます。これは、「最高に優れた組織形態」とは全く異なります。

これを指摘したのが、アメリカの社会学者のロバート・キング・マートンです。

「形式的な手順」は、大きな組織を維持していくためには必要不可欠なものですが、組織の規模が大きくなったり複雑になったりすると、それに伴って手順も増加・複雑化するという問題です。

このようになってくると、元々は何かを効率的に行うための手順だったにもかかわらず、それが逆に組織の足枷になってしまいます。

「官僚制の逆機能」の一例として、「目標の転移」という現象があります。

例えば、「手順を的確に守る」ことは、「形式的な手順」で運営するために必要なのですが、それが次第に自己目的化してしまい、かえって能率を低下させてしまうような状況です。

このように、目的が転移してしまった状況の中では、もはや組織が何をするためにつくられたものなのかという最終的な目標は意識されなくなってしまいます。

そして、組織のメンバーは「手順を的確に守る」ことだけを重要視するようになり、融通が利かなく、手順が定められていないことへの対処ができなくなってしまいます。

このような状態を「訓練された無能」と呼びます。

 

サボタージュマニュアルには、R・K・マートンがこの「官僚制の逆機能」を発表する前に、それを先取りした指摘が既に多数載せられています。 

何でもかんでも文書で伝達することによる弊害

「形式的な手順」の一つの構成要素として、M・ウェーバーは文書主義をあげたわけですが、これはたしかに的確で誤りのない伝達は可能にするかもしれませんし、あとで要求や指示を整理したり、統計を取ったりする場合には有効です。

しかし、これも徹底すればするほど足枷になってきます。

口頭で一言伝えれば済むことであっても、文書っで伝えるとなると労力と時間が掛かります。

そして、書き間違い発生したときであれば尚更です。

まとめ

「形式的な手順」を守ることや「文書化」することで、大きな組織で沢山の人がかかわる仕事でもも効率的に行うことができます。

つまり、効率的に行うという目的のために、「形式的な手順」や「文書化」という手段で対応しようとするわけです。

しかし、目的と手段が逆になり、「形式的な手順」「文書化」が目的となってしまうと、それが足枷となり非効率になったり予期せぬ事態に対処できなくなってしまいます。

生産性の向上は喫緊の課題でもあります。何が本当の目的か、思考停止しないように考えられるようにしておきたいものです。

 

サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質

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