会議の無駄
サボタージュマニュアルには、「会議を開く」こと自体が項目として挙げられています。
会議を行うことで、なかなか話が纏まらなかったり、何が決まったのかよく分からなかったり、時間とエネルギーの無駄のように感じたことは多々あると思います。
サボタージュマニュアルにあるように、会議を開くことが組織の活動の足枷になるというのでしょうか。
知らず知らずの内に組織活動の足を引っ張っていることにならないよう、確認していきましょう。
「三人寄れば文殊の知恵」は本当?
以下のような研究があります。(Taylor, Berry & Block, 1958他)
パズルや数学などの問題を、個人で解くときと集団で解くときで比較した実験では、集団で解いたほうが優れたパフォーマンスを示しました。この結果は、数的優位な集団の方が有利なのは当然といえます。
次に、集団は集団なのですが、一人ひとり別々に解かせて持ち寄るときと、皆で集まって話し合いをしながら解かせるときで比較した実験では、前者のほうが優れていたというのです。
つまり、「三人寄れば」ではなく、「三人集めて寄せないこと」が文殊の知恵を導くわけです。
これを会議に当てはめると、メンバーは予めアイディアや考えを持って参加することが有意義な会議といえます。
逆に、会議の場であれこれと考えたりすることは効率が悪いということになりますので、そのような会議は不要といえます。
なぜ集団で寄るとパフォーマンスが低下してしまうのか?
1 社会的手抜き
人間は、自分一人で仕事をする場合、自分自身としても外部からも、「自分がどれだけ仕事をしたのか」が見えます。
しかし、集団の中の一人として仕事をする場合、集団の仕事に対して「自分がどれだけ仕事をしたのか」が見えてきません。
このような状況では、人間は手を抜きがちになるということが分かっています。
これを「社会的手抜き」といいます。
この傾向は集団が大きくなればなるほど顕著になり、自分では意識していなくてもそうなってしまいやすいのが厄介なところです。
人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)
2 評価懸念による発言の抑制
会議では、人間は本質的な問題解決よりも自分自身が他人からどのように評価されるかを気にします。
議題の問題は一過性っですが、自分に対する評価はこの先ずっと続くからです。
このような状況では、自由で積極的な発言を抑制してしまいます。それどころか、集団が間違った方向に進みそうを思っても、発言を差し控えてしまうようになります。
3 沈黙の螺旋
A案とB案のどちらにするか議論をしているとき、A案有利の雰囲気になっていると感じると、自分はB案が良いと思っているとしてもそれを主張することはせず、黙ってその状況を傍観することが多いのです。
この原因のひとつは、「評価懸念」です。
他人と同じ意見を主張することは相手から好感を得られる可能性が高いので、「評価懸念」は少なくなるわけです。
その結果、集団で議論すると次第に多数派が多くなり、少数派は発言しにくくなってしまいます。
ドイツの政治学者エリザベート・ノエル=ノイマンは、これを「沈黙の螺旋」と呼びました。
- 作者: E.ノエル=ノイマン,Elisabeth Noelle‐Neumann,池田謙一,安野智子
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2013/03
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
4 同調
上述のように、多数派の意見が議論の主流になってしまうと、少数派は多数派の意見に同調してしまうようになります。
これは多数派の意見が正しいと思ったから同調する(私的同調)のではなく、自分の意見の意見は違うがもめないように皆と同じ意見に同調する(公的同調)のです。
また、ここで考えなければいけないことは、そもそも多数派の意見は本当に多数派なのか、ということです。
会議の参加メンバーの中で声の大きい一部の人の意見が「沈黙の螺旋」と「同調」のメカニズムによって集団の結論になってしまう可能性があるのです。
5 調整損失
社会心理学者のI・D・スタイナーは、会議において生じる時間の無駄を「調整損失」と呼びました。
会議のとき、重要な案件で自分も一生懸命参加している状況でも、発言のタイミングを待っている時間が一番多いのではないでしょうか。
そして、自分の発言をするタイミングを計っていることが、時間とエネルギーの無駄となります。
まとめ
これらのメカニズムは、いずれも会議をするということが必ずしも参加メンバーの能力を効果的に合わせたものにならないことを示しています。
それどころか、会議をすることによって組織の活動の足枷になったり、間違った方向に進むのを修正できなかったり、知らず知らずのうちにマイナスなことを一生懸命行っていることになってしまいます。
会社は一人の仕事で完結するわけではありませんので、会議することを100%頭ごなしに否定するわけではありませんが、人間の特性を知って効率よく行動していきたいものです。