パワハラは「学習性無力感」を引き起こす
パワハラ被害者に対して、嫌なら逃げればいいという意見があります。しかし、当事者から見ると、それができないから困っている、という声が多いのではないでしょうか。
その原因はとして、「学習性無力感」に陥っている可能性が高いのです。
学習性無力感とは
学習性無力感とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象である。
ネズミなどの実験でも有名です。
つまり、自分でコントロールできないストレスに長期間さらされた場合、改善しようとせず、あきらめてその状況を受け入れてしまう、ということです。
ビジネスシーンでいえば、上述のパワハラがストレスとなります。何か言ったり提案しても上司から過度に否定され続けることで、自分の行動は無意味だと学習してしまいます。そして、自己肯定感が低くなり、退職する意欲も失せてしまい、最終的には現状維持で続けるしか選択肢がなくなる、ということです。
「どうせ無駄だからやらない」という考えになってしまっているのです。
学習性無力感から脱するために
無力感を学習してしまうというのは、学習する能力が高いということであり、決して悪いことではありません。無駄なことをやっていつも失敗していては、「あいつは学習しないヤツ」という評価をされてしまいます。
失敗やミスの原因を全て自分としてしまうのは、自己肯定感が低くなってしまうので良くありません。それは仕組みや状況が原因だったと適度に考えることで、自己肯定感を保つことが重要です。
そして、パワハラ上司に対しては、「そういうヤツ」と学習しなければなりません。
上司の立場として
逆に、部下が学習性無力感に陥らないために、気をつけなければなりません。そのためには、
- 部下のやる気と能力は別として考え、やる気はポジティブに捉える。
- やる気が生産性に寄与しにくい方向に行っている場合や、失敗やミスが発生した場合は、頭ごなしに否定せず、一緒に考える。
「お前はダメだ」という方向には持っていかないことが重要です。事実は事実として正しいのですが、それをストレートに部下にぶつけるのは、コーチングとしては最悪なことです。